診療情報管理士と医師事務作業補助者の仕事内容の3つの違い
『これから医療事務の仕事をしたいと考えているのですが、医師事務作業補助者と診療
情報管理士の違いが分からなくて、どっちも似ているような印象で、どのような相違点
が具体的にあるのでしょうか?』と読者の方から質問を頂きましたのでお答えしておき
ます。医師事務作業補助者の職種の内容は認定試験でも出るので覚えておいて下さい。
目次
診療情報管理士と医師事務作業補助者の主な相違点3つ
- 診療情報管理士 HIM Health Information Manager
- 医師事務作業補助者 DC Doctor’s Clerk
- 医療秘書 MS Medical Secretary
- 医療情報技師 HIT Healthcare Information Technologist
- 医療事務担当者 MC Medical Clerk
診療情報管理士の認定試験では診療情報管理士の業務は診療録管理体制加算と、そして
医師事務作業補助者の職務は医師事務作業補助体制加算と関連して出題されています。
両者の違いを調べていて当サイトへ来訪して下さった読者の方達からすると、具体的に
どこが異なっているのか?よく分からないという感じと推察され、以下で解説します。
医師事務作業補助者は資格ではなく職種であること
『医師事務作業補助者』という資格が存在する訳ではありません。医師事務作業補助者
は医師の事務的な作業による時間外労働の負担の軽減を主な目的として創設された事務
補助の職種で無資格でも就業できます。医療事務の求人情報の『事務補助』という職種
の方が医師事務作業補助者より一般に知名度が高いです。その一方で診療情報管理士は
医療機関における各種の診療情報のデータの管理と活用を専門的に担う職種です。医療
機関によっては診療情報管理士の資格が無くても就職できる場合がありますが、就業を
始めてから取得するように職場で言われます。基本的には診療情報管理士の有資格者を
指定する求人情報が昨今では増加しています。医師事務作業補助者は職種の名称です。
但し、『医師事務作業補助』というキーワードが含まれる資格試験は4種類有ります。
類似の検定試験が多過ぎですが、就職や転職の活動等でその実績をアピールできます。
- 医師事務作業補助技能認定試験(ドクターズクラーク)
- 医師事務作業補助者検定試験(ドクターズオフィスワークアシスト)
- 医師事務作業補助者実務能力認定試験
- 認定医師秘書(医師事務作業補助業務実務能力認定試験)
医師事務作業補助者は医師の指示下でのみ働くこと
医師事務作業補助者は医師のみの指示で稼働する事務補助の職種で、診療情報管理士は
資格(民間資格)を所持して働く専門職種で医師の直属の部下ではありません。但し、
診療情報管理士が医師事務作業補助体制加算に関係する医師事務作業補助者として配置
されるケースが普通に有ります。つまり医師事務作業補助者と診療情報管理士は職種の
内容的にはお互いに関連性があって重複する部分が有ります。診療情報管理士は職能域
がかなり広範で、医師事務作業補助者を兼務できます。でも逆に医師事務作業補助者が
診療情報管理士として仕事をすることはあり得ません。当該職種に対応できる専門性と
資格を保有していないからです。因みに診療情報管理士は医事課や診療録管理室の所属
である場合が多くて誤解されがちですが、厳密には医療事務の職種ではないです。医療
事務の担当者と一緒に仕事をするパートナーというイメージで誤解をしないで下さい。
医師事務作業補助者は担当しない業務が明確なこと
医療機関で診療情報管理士が担当する各種の診療情報のデータの管理と活用は医療の質
の評価による安全管理と医療政策の構築による経営管理への寄与が最終的な目的です。
それらが大義名分であり、診療情報管理士の職種の内容は拡大を続けている傾向が有り
ます。一方で医師事務作業補助者は担当しない、やってはいけないとされている業務が
明確に規定されています。診療情報管理士は診療情報のデータの管理と活用を全般的に
担当する何でも屋さん的な存在で、この点が医師事務作業補助者と大きく異なります。
診療情報管理士はその気になれば医師事務作業補助者の仕事を兼任できますが、その逆
は無理です。医師事務作業補助者が診療情報管理士として働くことはできません。また
診療情報管理士が医師事務作業補助体制加算に関する施設基準で指定要件とされている
医師事務作業補助者の32時間研修を担当する場合もよく有り、両者は関係が密接です。
診療情報管理士が担当する業務 | 医師事務作業補助者が担当する業務 | 医師事務作業補助者が担当しない業務 |
---|---|---|
・院内でのがん登録業務 ・DPC関係業務 ・クリニカルパス関連業務 ・疾病統計業務(ICDコーティング) ・診療録(カルテ)の点検業務 ・がんゲノム医療での臨床情報の登録補助業務 ・診療情報の集計と分析による経営資料の作成支援業務 ・医療情報システムの開発と運用への支援業務 ・医師事務作業補助者の業務 ・医師事務作業補助者の32時間研修業務 etc. |
医師(歯科医師)の指示による ・診断書等の文書作成補助業務 ・診療記録の代行入力業務 ・データの整理業務 ・がん登録業務 ・カンファレンスの準備業務 ・行政上の業務 |
・医師(歯科医師)以外の指示による業務 ・診療報酬請求業務 ・外来等の受付業務 ・医療機関の経営と運営の為のデータの収集業務 ・看護業務の補助業務 ・医療資材の運搬業務 ・清掃業務 etc. |
要は医師事務作業補助者の上位互換の職種が診療情報管理士で、待遇の条件も有資格者
で高度な専門性及び多様な役割が医療機関において求められる為に当然良くなります。
現状で国家資格ではないですが、きちんと資格を持った上でやり甲斐を強く感じながら
将来性の有る仕事に携わっていきたいと考えるなら、診療情報管理士の方を推します。
余談ですが、巷では『医療情報管理士』というキーワードが使用されていますが、その
ような資格は無く、医療情報技師は在りますが、錯誤をしないように注意して下さい。
参考までに、医療秘書は医師や看護師等の医療従事者をサポートする職種ですが、医師
事務作業補助者は医師の専属で事務的な作業のみを補助するスタッフという存在です。
従って医師事務作業補助者は職種の内容的には診療情報管理士より医療秘書の方に寧ろ
近いと言える面が有ります。皆さんの適性や意思を踏まえて職業を選択されて下さい。
