診療情報管理士認定試験の厚労省の病院統計と診療記録の価値
診療情報管理士の認定試験の専門分野でたまに1題ずつ出題される『厚生労働省の病院
統計資料』とマッケクレンが提唱した『診療記録の価値』では両者共にややこしい面が
あって覚えにくいですが、頻出する項目なのでまとめて説明しておきます。模試問題の
解説では知識の全体像が記載されていず、よく出るので記事化する価値を認めました。
厚生労働省による病院統計調査
厚生労働省による病院統計調査は5種類有り、以下の表は対象と周期まで細かく暗記を
しておいて下さい。項目を相互に比較して違いを見つけながらだと覚え易くなります。
調査名 | 内容 | 対象 | 周期 |
---|---|---|---|
患者調査 | 病院と診療所を利用する患者について傷病状態等を明らかにして医療行政の基礎資料を得る為の調査で、医療に対する顕在需要(実際に医療機関を受診した患者による需要)を把握できる
|
無作為抽出された医療施設を利用した患者 | 3年 |
病院報告 | 全国の病院、療養病床を有する診療所における患者の利用状況を把握する為の調査 | 全国の病院、療養病床を有する診療所 | 毎月 |
受療行動調査 | 全国の医療施設を利用する患者について、受療の状況や受けた医療に対する満足度等を患者から調査することにより、患者の医療に対する認識や行動を明らかにして医療行政の基礎資料を得る為の調査
|
患者調査から無作為抽出された一般病院を利用した患者 | 3年 |
医療施設調査(動態調査) | 医療施設の分布と整備の実態を明らかにすると共に、医療施設の医療機能を把握する為の調査 | 開設・廃止・変更等の届出を受理又は処分した医療施設 | 毎月 |
医療施設調査(静態調査) | 医療施設の分布と整備の実態を明らかにすると共に、医療施設の医療機能を把握する為の調査 | 全ての医療施設 | 3年 |
また病院報告と患者調査に関しては病院統計資料の計算式も頻繁に出題されています。
計算問題は出されていませんが、沢山在る計算の公式を判別できるようにして下さい。
診療記録の価値は実は9個ある
病院管理学の創始者であるマッケクレンが提唱したとされる『診療記録の価値』は6個
ですが、その他に類似の項目が実は3個有り、内容と属性の違いを身につけて下さい。
診療記録の価値 | 内容 |
---|---|
患者にとっての価値 | 良質で安全な医療を受ける為の重要な資料となる |
医師にとっての価値 | 医師にとって自らの医療業務を管理する記録であり、医学教育と医師の卒後教育にも利用される資料となる |
病院にとっての価値 | 医療安全活動の推進、医療上・マネジメント上の改善の為の資料となる |
法的防衛上の価値 | 診療行為の適正性を検証する為の証拠資料で、法的紛争時の証左として価値が高い資料となる |
公衆衛生上の価値 | がん登録や各種の疾病統計、死因統計、その他の公衆衛生上の調査の為の資料となる |
医学研究上の価値 | 疾病の予防、診断、治療の方法の改善、疾病の原因や病態の理解、患者のQOLの向上を目的として、患者に提供された医療を研究する為の資料となる |
医療保険上の価値 | 診療報酬請求の根拠であり、指導・監査等の際に提出する資料となる
【注意】医療保険上の価値は日本特有で、マッケクレンの『診療記録の価値』には含まれない |
医療安全上の価値 | マッケクレンの『診療記録の価値』には含まれない |
行政にとっての価値 | マッケクレンの『診療記録の価値』には含まれない |
【例題】
1 厚生労働省による病院統計調査について正しい組み合せを1つ選びなさい
a. 患者調査 - 医療に対する潜在需要を調査できる
b. 医療施設調査(静態調査) - 全ての医療施設を対象に実施する
c. 病院報告 - 医療に対する顕在需要を調査できる
d. 受療行動調査 - 全国の病院、療養病床を有する診療所を対象に実施する
e. 医療施設調査(動態調査) - 3年周期で実施する
2 トーマス・マッケクレンの提唱した診療記録の価値に含まれないものを1つ選びなさい
a. 医学研究上の価値
b. 病院にとっての価値
c. 医療安全上の価値
d. 法的防衛上の価値
e. 患者にとっての価値
【解説・解答】
1
a. 医療に対する潜在需要を調査できるのは患者調査ではなく国民生活基礎調査である
b. ○
c. 医療に対する顕在需要を調査できるのは病院報告ではなく患者調査又は受療行動調査である
d. 全国の病院、療養病床を有する診療所を対象に実施するのは受療行動調査ではなく病院報告である
e. 医療施設調査(動態調査)は3年周期ではなく毎月実施する
正解は b.
2
正解は c.
